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遙かなる
時空の中で2

 

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小説
遙かなる
時空の中で2

犬夜叉

写真
明日のナージャ

『きみのために出来ること』

犬夜叉 弥勒×かごめ

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いつからだろうか、弥勒様が手を握り締めている姿が気になりだしたのは。
ふと、姿を見ると左手を触っている。
痛いのかな…とも思うけど、聞くに聞けない雰囲気でいつも見守ってしまう。
 …あの奈落から受けた呪いによって開いた手。
風穴と呼ばれている右手は、いつもは数珠で封印されている。
そんな、右手を抱えてどんな恐怖に襲われているのか想像が出来ない位だけど…。
でも、いつも明るくてちょっとスケベな弥勒様だから無責任にも大丈夫かなって思ってた。
そう、あの晩までは…。




この晩は、周りに村が無かったから、野宿をすることになった。
最近は強行軍になってきているから、野宿をすることは珍しいことでは無い。
でも、やっぱり外で寝るというのは慣れないなぁ…。
この時代では仕方が無いことなんだろうけど。

私達は、大きな木を盾にするかのように眠ることにした。
「今日は、私が夜の見張りをしますからゆっくり寝て下さいませ。」
ニッコリといつもの笑顔をたたえて見張りの役を買って出てくれた。
夜の野宿をするときは、交代制で見張りをしてくれている。
犬夜叉、弥勒様、珊瑚ちゃんの順番。
それでいくと今日の当番は、犬夜叉だった。

「犬夜叉も連戦で疲れてしまって鼻も効かないみたいですし、
役立たずに見張られるよりは安心でしょう。」
と、いうことらしい。
笑顔でも、言うことはキツイ。
それでも犬夜叉は反論もせずにフテ寝をしてしまった。
よほど、疲れているのだろう。

「私が、一緒に起きて見張ってようか?」
珊瑚ちゃんも気を利かせてそんな提案をしてくれる。

…ここの所、奈落の動向が分からなくて不安なのかもしれない。
私も…と言いたいのだが、役に立たないのは自分でもよく分かっているから言い出せない。
皆の疲れているのは、私を庇いながらの闘いになるからだ。

「いや、今日は私一人で大丈夫でしょう。
珊瑚も、ゆっくり疲れを取るが良い。かごめ様も、犬夜叉…はもう寝ているようですね。
よほど、疲れていたのだろう…。なぁに、大丈夫私は上手に力を抜いて来ていますから、
今晩くらいはしっかり見張りますよ。」

…んっ?
おかしい、いつもなら、その申し出を断ることはせず、二人で見張りをしていてくれるのに…。
あまつさえ、やっと、私の子どもを産む気になってくれたのかと迫りに行くくらいなのに…。
「そっか、分かった…。」
不承不承といった感じで珊瑚ちゃんも眠りの体制に入った。
私も寝てしまおう。少しでも役に立てるように…。


そう思って寝る体制になったのだけれど…静かになって、ふと思い出してしまった。
弥勒様の手を握るクセ…。
今も、しているのだろうか…?
気になってくると、どんどん眠気が覚めてきてしまう。
気になって少し体勢をずらして見てみると…。
アレっ?
弥勒様がいつのまにか居なくなっている。
でも、焚き火は消えてないから、そう遠くへは行っていない筈。
探してみよう…。

何だか、急に姿が見えなくなるなんて不安になる。
私は、犬夜叉達を起こさないようにゆっくりと寝ていた所を離れて、弥勒様を探すことにした。


…この、不安はなんだろう…。
私達が寝ていた大きな木を回り込むとすぐに川に出た。
そこには、見慣れた影がある。
弥勒様だ。



声を掛けようと近づいたけれど…声を掛けられない…。
また手を握って見つめているからだ。
とても、暗く悲しい目…。
いつもより、思いつめているな気がする。
なんだか、消えてしまいそうで怖くなって、私は情けないけど、泣いてしまった。
声を立てずに泣いたつもりだけど、弥勒様に気づかれてしまった。
あわてて涙を拭こうとしたけど、涙が止まらない。

「どうされたのですか?大丈夫ですか、かごめ様。」
私が心配して探しに来たのに、コレでは立場が逆になってしまった。
情けないやら、恥ずかしいやらで、よけいに泣けてきてしまう。
「怖かったのですね。すみません、勝手に少し離れたこの場に来てしまって。
今日は、どうしても一人に…少しでも一人になりたかったもので…。」
少し淋しそうに笑う。もう先程のように、手は握り締めてはいない。
「あの、私怖くなってしまって…それで、あの…。」
上手く言葉が紡ぎ出せずにいると、何か誤解してしまったのか。
「森を一人で歩くのは慣れなくても良いのですよ。
かごめ様はこの異常な場に慣れる必要はないのですから。
怖くて良いのです。怖くなってしまったのなら、珊瑚の側で眠ると良いですよ。
…誰かの肌に触れていると落ち着いて眠れるものです。」

…誰かの側で眠りたい時が弥勒様にもあるのだろうか…。
そう思ったら、声に出すよりも先に体が動いてしまって弥勒様の手を握り締めてしまった。
そう、あの手を…。


「ああ…。怖いというのはこの手でしたか…。」
違う。弥勒様を傷つけてしまった。
そうじゃない。この思いを口にしなければ、本当に弥勒様が消えてしまいそうで…。
「違うんです。弥勒様のこの手が怖いなんて私一言も言ってません。
ただ、この手を見つめている時の弥勒様が、今にも消えてしまいそうで…。
私達の側から、離れていきそうで、それが怖かったんです。」
またしても、泣き出しそうになるのを堪えながら、必死に言葉を紡ぎ出す。
消えてしまわないように…。

私の言葉の後、弥勒様は黙ってしまった。
ただジッと私を見ている。
さっきまで、泣きたい気持ちだったのに、今度は、ドキドキしてきてしまった。
あまりにも、真剣な眼差しで見つめられるから…。
顔が、赤くなっていないか…そんなことまで気になりだした時。
「今日は、私の生まれた日だったのです。」

静かに語りだしてくれた。
「私は生まれたことに疑問を持っています。
なぜ、こんな体質になると知っていながら子どもを作ったのか…。
責任を少しでも自分から減らすためではないだろうか、とさえ思いました。」
少しずつ、何かを吐き出すように話す。
(聞いて貰っても良いのだろうか…と思いながらも、言葉を止められない。
握られた手が、とても温かいから…気持ちを溶かしてくれるように温かいから、
ついつい言葉を紡いでしまう。)
「生まれた日になると、この終わらない疑問を思い出すから。
だから、一人になって考えたかったのです。生きている意味を…。」
 (問えるものなら、両親に聞きたかった。もう、この世には居ない父に…。)

「生きているのが怖いのですか?」
ポツリと、かごめが言った。
つい、声に出して質問してしまった。
驚いた顔をして弥勒様が、
「怖い…そうですね、いつ父のように風穴が暴走して私を取り込むか分からないですから。
…それに、かごめ様たちが巻き込まれたらと思うと、正直怖いです。」
そんな運命で、死ぬのは嫌です。と言った。
とても辛そうで、何とかして弥勒様の負担を減らしたくなって、
でも、掛ける言葉が見付からなくて。
そんな自分にイライラして、ついつい弥勒の手を握る手に力が入ってしまった。
しばらく沈黙した後、弥勒が声を掛けてきた。
「怖くはないのですか…私の手が。」
ずっと、握り締めたままになっている手を見ながら。そう、問うてきた。
「今にも、あなたを吸い込んでしまうかもしれないのですよ。」

「怖くないです。」

間髪居れずに答えると、驚いた表情をしながら、顔をあげてかごめを見つめてきた。
怖くないと、言った理由を聞き出そうとしているかのような目で。

「だって、この手は、私を何度も助けてくれました。攻撃を受けた時は守ってくれました。」
「………。」
「それに、弥勒様の手じゃないですか。怖い訳有りません。」
説得力も何もない言葉だったが、弥勒はそれで十分だった。
温かい手で、握り締めていてくれるだけで、それだけで十分だった。
弥勒に、笑顔を向けてくれるだけで…。
こんな簡単なことで、少し胸のつかえが取れていく。

「ありがとうございます。」
いつもの、笑顔に戻った弥勒を見て、自然とかごめも笑みがこぼれた。
それが、弥勒の心を少し溶かしていくのだとは知らずに…。
いつになく、真面目な話をしてしまって照れくさくなったのか、
「いつまでも、このような柔らかい手で触られていると、発情してしまいますよ。
私は男ですからね。」
少し冗談めいて…でも実のところ少しその気持ちもあってそんなことを言った。
「え?」
男だからではなく、弥勒様だからではないだろうか…
と考えていたものだから、手を離すのを忘れていた。
しばらく、ぼーっと考えていると、グイッと引き寄せられて、
そして…温かい感触が、唇に降りてきた。
一瞬の出来事で何が起こったのか理解できずにいると、少しからかうような口調で、
「生きていることを実感しましたよ。今のでね。」

そして、「私の生きている証に、私の子どもを産んでは下さらんか。」と
いつもの、台詞が出てきた。
いつもの調子の弥勒だ。
恥ずかしい台詞だし、先程にやられたことは分かっているけど、うれしくなってしまう。
少しでも、元気になってくれたのだ。
そう勝手に確信したら、何だか安心して眠くなってきた。
だからというわけでは、ないのだけれど、
「何を言ってるんですか、証なんてなくても手を握れば生きているって分かりますよ。」
と、さらりとかわして
「じゃあ、私は、もう少し寝ますね。」
と、言った。今度こそ、ゆっくり眠れそうだ。
「残念ですね。…おやすみなさい、かごめ様。」




さっきまで重苦しい雰囲気だったのに、いつのまにやら空気が晴れていた。
相変わらず、疑問は消えないけれど、もう手を握り締めてしまうこともない気がする。
あの、温かい手の感触が残っているから…。
さぁ、世にも珍しいカップリングのお話ですよ。
誰が、何と言おうと、私はこのカップリングが
好きです。プッシュです。
ネットでこの二人の話を探してみましたが
無かったので、作ってしまおうと、、、、、。
あの「弥勒様」「かごめ様」って、呼ぶのが
萌えポイントなのですよ!!!
アニメ見ていても、弥勒がかごめを庇ったりしていると
一人大喜びしております。良いです。